家人がごくたまに話の流れで口にする「もしも自分の背が高かったら、今より人の気持ちがわからない人間になっていたかもしれない」というエピソードがすごく好きだ。

家人はあっけらかんとした明るい性格で、根拠のない自信が彼の周囲に対する優しさや寛容さにすごくいい働きをしている人だ。その上ハンサムでおしゃれだから、若い頃はさぞモテただろうと思っているのだが、その明るさゆえ、背も高くコンプレックスがなかったら、きっと調子に乗ってしまっていたのではないか、と自分のことを分析しているという。

私はそれを、なんて思慮深くて素敵なんだと思うし、実際頭の中で家人の背が高かったらと想像してみる。
彼はお酒が飲めないから遊び方は限定されるが、それでも今の人生より女性関係は派手になっていたかもしれない。若い時期に仕事関係で出会ったモデルと早めに結婚していたかもしれない。そうしたら、私とはすれ違うことはあっても結婚はしなかっただろう。

頭のいい人だから、人の気持ちがわからないということはないと思う。でも、たとえば体のどこかにコンプレックスがある人の気持ちは、理解できないというよりは、背の低い彼より知らない状態で歳をとることになったかもしれない。
その場合、すれ違った私たちは果たして仲良くなれただろうか。そう考えると、私は家人の背が低めだったことにすら、感謝に気持ちを抱いてしまうのだ。
2025/11/04(火) 23:23 Comment(0) permalink